歯列矯正をするときには健康な歯を抜くことがあるとかないとか・・・。
健康な歯ならば、なるべくそのままにしておきたいと全ての人が思うと思うのですがどうなんでしょうか。
そのあたりのことを詳しく書いてみました。

綺麗な歯ならび

歯列矯正治療では健康な歯を抜くことがあるって本当ですか?

歯科医院に治療に来られた方の検診をすると、時々隙間はないのに歯が左右の1本ずつ足りない方がいらっしゃいます。「矯正をされたことがありますか?」とお聞きすると大抵の方がYesと答えます。
確かに矯正治療では、便宜抜去といって健康な歯を抜くことがあります。これは、顎の大きさに対して歯が並びきれず、どうやってもすべての歯をきれいに並べることができないためやむなく1番支障のない(と言われる)歯を抜くことでスペースを作ってあげる方法です。

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通常は、真ん中から4番目の歯(第1小臼歯)を抜くのが一般的です。この歯は、「噛む」ことに関してはすべての歯の中で最も関与が薄く、また根も1本ないし2本で歯の大きさもそれほど大きくないので抜歯するには最も弊害の少ない歯なのです。と、ここまで書いたのは少し前の話で、最近ではこの便宜抜去に異議を唱える声も多く出てきました。

便宜抜去法は、以前は歯科矯正治療の主流でした。矯正治療の歴史の中で、抜歯をするかしないかという論争が60年ほど前にアメリカで起こり、その頃から日本も影響を受け抜歯をするのが主流になったともいわれています。ところが、近年では本当に健康な歯を抜かなければ歯を並べることはできないのか?という疑問が出てきたのです。健康な歯を抜くことは、私たち歯科スタッフにとって大変胸が痛むことです。

ですから、抜かれる患者さんにとってもこの上ない苦痛のはずですね。また、以前は矯正治療の目的は「前歯をきれいに並べる」ことでした。前歯がきれいであれば、とりあえず噛み合わせや奥歯の並び具合は大目に見ようというコンセプトでしたから、前歯を動かしやすい4番目の歯が便宜上抜歯される羽目になったともいわれています。

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そこで、現代の歯科矯正治療は抜歯をするのか、ということについてですがその答えは「場合によってはYes」です。抜歯をせずに歯を並べるためには、何らかの方法でそれだけのスペースを作ってあげる必要があります。例えば、顎の骨を装置を使って広げて歯が並ぶ顎そのものを大きくする方法があります。
ただし、いかんともしがたいケースの場合、便宜抜去もやむなしということはあります。こういうケースでは、逆に歯を抜かずに無理をして並べても、後戻りをしてしまうことがあります。

つまり、「歯を抜く」ということが、その人にとって最善の治療方法である場合にのみ選択されるべき方法という考え方が、現在の主流といってもいいでしょう。歯科矯正治療で歯を抜くか抜かないかという線は、矯正歯科医の判断になります。様々な検査の結果抜歯が必要と診断された場合、よい噛み合わせと美しい歯列を得るための代償であると考える他ありません。